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伊豆半島はのんびり~。空気もおいしいし、緑もきれい~。お水も美味しいし、時間がゆっくり流れています。温泉旅館 ~御宿しんしま~

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漆喰鏝絵の名工「入江長ハ」200年祭

      2015/05/17

こんにちは。佐野2号です。
今日は、松崎町の偉人の一人をご紹介いたします。

日本中の左官職人さんには知られている有名人です。
「入江長ハ」さんです。
普通の人は、ぜんぜん知らないと思います。
ですが、静岡県の小学生の社会科の授業で使われる(資料集)には載っています!
どんなことで、有名かと申しますと、一言で言うと「漆喰鏝絵」を芸術の域にまで高めた方です。
それでは、200年祭を記念して、町内に配布された冊子の内容をご紹介いたします。

「入江長ハ」 左官の技術を、芸術にまで高めた名工

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「入江長ハ」~左官職人にして漆喰鏝絵の名工~

文化12(1815)年。今からちょうど200年前に誕生しました。

生まれは松崎村明地(現在の宮内と南区の間)。13歳のころ左官職人の弟子になります。
天保3年(1822)長ハ17歳、江戸へ出ます。 川越(埼玉県)で左官や絵の勉強をしていたようです。 当時の江戸は、天保の大飢饉で米の値段は跳ね上がり、幕府は「人返し令」を出して江戸の人口を減らそうとしていました。
天保13年(1832)長ハ27歳、江戸の深川に定住します。 江戸末期から明治期には、伊豆の松崎港は木炭や薪などの産物が盛んで、多数の貨物船が往来していました。 海上交通の盛んな時期であり、船を利用すれば、江戸も今より近い場所だったと思われます。
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弘化2年(1845)、郷里、松崎の浄感寺の改築に参加。
寺内の天井に「雲龍」(上の図:転写不可)、欄間に「飛天」を製作。これが長ハの出世作といえます。

安政3年(1856)長ハ41歳。東京目黒の祐天寺の修繕に参加し、不動尊を修理します。その際、「天祐」の号を授かります。 その直後に成田山新勝寺(千葉県)の「臼に鶏」の作品に「天祐」の落款が見られます。印章には「天祐」「圬者」(おしゃ)おしゃの圬という文字は、鏝を使う人という意味があります。 このころから、高い評価を得ます。

 入江長ハの普段の暮らし

当時松崎から長ハ宅で修行していた山本三右衛門が語っています。 ・・・師匠の家は深川の八名川町で大橋を渡って行って、安宅の近所にありました。(略)仕事場は小屋がけのような穢い(きたない)所で、入口には注連縄(しめなわ)を張って「無用の者入るべからず」と書いてありました。家には龍沢寺からもらった袈裟と衣が置いてあって、それを着て朝晩お経をあげていました。身長(せい)は5尺4寸もあったでしょうか、普通よりも高い方でやせ形で中肉の人でした。始終ニコニコしていて、弟子たちにも冗談を言う。食事も麦の挽割(ひきわり)と米と半々にしたものを食べていて、「お前達がコメのご飯を食べてはもったいない」「食べます」というと、「それは俺の食べ物だ、食べてはいかぬ。ハハハ」と笑う。笑うと靨(えくぼ)が出てニコニコした顔になる。決して奢ったものを食べない。非常に質素でした。神仏を念じて、贅沢をせず、なりもよいなりをせず、人に頼まれて塗っても、礼のことは決して言わぬ。そういう風の人でした。

(「伊豆長ハ」結城素明著より引用) ———————————————

明治期になると長ハの作品に変化が起きます。

今までは漆喰の立像や漆喰壁への浮彫り(レリーフ)が多かったのですが、額装した鏝絵が増えます。ヨーロッパから輸入された油絵の影響と思われます。 長ハは、明治10年第1回内国勧業博覧会に出品し、受賞します。その賞状に「浮起ノ法欧州ニ伉フ有ラバ更ニ佳妙ニ至ルヘシ」と書かれています。ヨーロッパの油絵のように明暗をつけて、立体感を出せば良くなるでしょうが、日本画を学んだ長ハにはつらい注文だったに違いありません。出品した作品は人物画でしたが現存していません。

明治11年、長ハ64歳の時、三島の龍沢寺で百日参篭をします。以前から仏教に帰依していた長ハは修業しながら、大作の不動尊像を製作します。総高1.8m、そのわきに1.2m高の矜羯羅童子と1mもの半迦の制多迦童子像が並びます。長ハの心意気を見せた作品といえましょう。長ハは龍沢寺で星定老師から「居士」号を授けられたという説もあります。「居士」とは高徳な人を表す称号で、名実ともに「名人」として認められたのだと思います。以後、長ハの作品に「天祐居士」の落款が見られます。

入江長ハ と 山岡鉄舟

長ハが三島の龍沢寺に参禅滞在している際に、山岡鉄舟に出会い互いに意気投合しともに研鑽を高めたとされています。山岡鉄舟といえば、幕末から明治へかけて活躍した歴史上の人物です。特に、反幕府軍が江戸城攻撃の際、西郷隆盛と勝海舟の間に入って、無血クーデターで江戸城を開城させた立役者です。その山岡鉄舟の書がこの地区に残っているのです。松崎町の伊那下神社に「伊那下」と書かれた大きな扁額(長ハが漆喰で仕上げてある)、春城院本堂正面に「龍華山」(春城院の山号)、責善社に「江南学」(明治17年江奈村が建てた小学校名)の扁額、岩科八区所蔵の掛軸等。それらは山岡鉄舟がこの地に滞在して書かれたものだろうと思われるのです。
岩科小学校(重要文化財)建築の際、長ハとともに山岡鉄舟もこの地に滞在していたのでは?
そんな風に思えるのですが。

明治22年 入江長ハは75歳でこの世を去った。同年「大日本帝国憲法」が発布。
町村制が実施され、この地域で21村あったのが、松崎村、中ノ郷村、岩科村になりました。

長ハの辞世 「我秋や 月一と夜も 見のこさす」

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以上は、伊豆長ハ作品保存会が発行し、生誕200年祭にちなんで、松崎町の各家庭へ配布したものです。
【詳細】 松崎町観光協会 内 保存会へお問い合わせください。

長ハ 生誕200年祭 【長ハ巡回展】&【行事】 予定

● 9/5~10/18 武蔵野市吉祥寺美術館
● 10/24~11/23 菊川市常葉美術館
● 12/13~1/13 伊豆の長ハ美術館
● 9/26(土) 長ハシンポジウム 講演会(松崎町、環境改善センター)
● 9/27(日) 長ハまつり (松崎町)

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漆喰鏝絵(しっくいこてえ)

【漆喰とは】・・・、お城の白い壁や、蔵の壁を作る際に使用する素材です。時代劇で見る「なまこ壁」の白い部分が漆喰です。 材料:海藻、麻すさ(麻の繊維)、消石灰など

松崎の町並み

松崎の町並み

【こて絵とは】・・・、左官が壁を塗る「こて」で絵を描いたもので、漆喰装飾の一技法。 古くは高松塚古墳、法隆寺の金堂の壁画にあり歴史は古い。漆喰は江戸時代に防火対策として幕府が奨励した。塗り籠め造りの建物が庶民に評価された。 江戸時代中期から徐々に盛んになり、静岡県松崎町出身の名工、入江長八がこて絵として芸術の域にまで昇華させたが、戦後、在来工法の衰退と共に腕利きの左官職人が減少。一時は幻の技巧となったが、近年、建築の分野で再評価が進んでいる。

 

プチ情報 【御宿しんしま】の鏝絵

当館には、明治13年築の蔵座敷がロビーの一部として組み込まれております。 名工「入江長ハ」の見事な漆喰鏝絵を建物についたままの貴重な状態でご覧いただけます。 重要文化財になっている「岩科学校」と同年代に作られた蔵座敷です。長ハの作品は、一度壊れると修復のできる職人がおりません。130年もの間、当館で守り続いている貴重な作品の保護のため、身元の確認ができている宿泊者のみ開放しております。また、階段が古いため、重量制限もございます。ご了承ください。
20150114_184241 —————————————————— 最後までお読みいただき、ありがとうございました!! 西伊豆松崎温泉 旅館「御宿しんしま」 Tel:0558-42-0236 ↑↑↑ スマートフォンから電話番号を タップすると直接電話できます。

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西伊豆松崎温泉 旅館 御宿しんしま
こんにちは。 御宿しんしまのsanoです。 都内ホテルの洋食料理人を経て現在は宿で腕を振るっております。 美味しいお料理をたくさんお召し上がりいただくことが生きがい。 伊豆半島の珍しい化石を見つけたり、専門家の先生方のお手伝いをしながら、日々伊豆半島の魅力を伝えるジオガイドとして活動中です。 ※永遠のパソコン初級者。誤字脱字ご容赦ください。

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